粘着駆動方式による急勾配を克服とための、等高線に沿った曲線が連続する線路を、地図上で国内の各地からピックアップし、典型的な例としてループとスイッチバックをまとめた。  上越線の谷川岳超え両端(松川/湯檜曽ループ)と北陸本線(鳩原ループ)、土佐くろしお鉄道(川奥ループ)と肥薩線の矢岳超え両端(大畑ループ/真幸スイッチバック)を地図で紹介する。
 
上越本線屋谷川岳超え「松川ループ」と「湯檜曽ループ」

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 東日本の関東地方(群馬県)と日本海側の新潟を結ぶ、上越線(上州:上総=越後)は日本の表と裏を分ける脊梁山脈を超えなければならない。登山のメッカである急峻な谷川岳を超す上越線は、その高度と急勾配で鉄道には難関である。
 旧国鉄はこの困難を南北のループ線により解決した。ループ線により高度を緩和し中間をトンネルで結んだ。トンネル掘削技術の進歩に伴いより長大なトンネルを掘削し、下り線はループを通過せずに通過できるようになったが、2つのループは上り線に残存している。
 上り線日本海側(新潟県)の北側の松川ループは、越後中里駅を出るとすぐに複線の下り線と分岐し、約420mR(半径、地図上で推定)のループに入り、時計回りで一周することで高度差約20m(地図の等高線で推定)を稼いでいる。その間の直線距離約2kmを約4.6kmを要して登坂している。
 ループを出て再び下り線と合流し新清水トンネルの、谷川岳登山基地の土樽・土合駅を経由し、表日本側の湯檜曽温泉郷あたりで再びループに入る。湯檜曽ループは約420mRでわずか約700mを反時計回りで、約4.9kmを要して高度差約50mを下っている。ループの出口が湯檜曽駅である。
湯檜曽ループページ
 
北陸本線「鳩原ループ」 土佐くろしお鉄道「川奥ループ」

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 北陸本線の敦賀駅(福井県)南の鳩原ループは、関西方面への上り線に存在しており下り線はループを経由していない。敦賀駅を出た上り列車は約2kmほどで下り線と別れて鳩原ループに入る。時計回りでぐるりと一周し琵琶湖側の新引田駅手前で再び下り線と合流する。
 ループの半径は約400mRでその間の直線距離は約1km足らずを、約4.1kmも迂回して高度差約50mを下っている。下り線は新疋田駅を出てずーっと笙川に沿って地上を走っているが、何故に複線化できなかったのか不思議である。
 土佐くろしお鉄道中村線は四万十駅と中村駅を結ぶ、旧国鉄中村線の第3セクター鉄道である。川奥ループは若井駅からループ入り口までをJR予土線を共用している。予土線と分岐して半径約360mRループを時計回りに一周し、直線距離わずか約400mを約2km強を要して、高度差約75mを緩和克服している。
 分岐した予土線はループの南から西側を、ほぼゞ同じ高度でトンネルを経由して地上を走っているが、川奥ループは深い渓谷を下るための高度差克服手段であろう。
 
肥薩線矢岳超え「大畠ループ/スイッチバック」と「真幸スイッチバック」

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←矢岳駅を挟んで北に↑大畑駅と↓南に真幸駅 

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 肥後熊本と薩摩鹿児島を結ぶ鉄道は、西に鹿児島本線と九州新幹線、東に日豊本線が走っているが、肥薩線は真ん中の阿蘇霧島連山を縦貫していて、その山々の景観は一大景勝スポットとして知られている。
 大畑ループ/スイッチバックは矢岳超えで知られる北側の熊本側にあり、南の宮崎県側に幸せの鐘で有名な真幸スイッチバクが位置する。両スイッチバクには駅が設置されていて、特急列車であろうと停車せざるを得ない。
  大畑駅から分水嶺の矢岳駅県境までは、約6.2kmを約200m登坂し、県境から真幸(まさき)駅までは約5kmで200mを下っている。
 大畑(おこば)駅はループとスイッチバックの駅で、高度差を克服する難所で全国でもまれな例である。熊本側からの下り線は西北からループの下端を東進し、スイッチバックの渡り線を経由して大畑駅に入る。次に進行方向を逆に西に進み渡り線ポイントで西方向の折返し線に登る。そこから再び進行方向を東に変え、ループを反時計回りに一周し南西方向へ高度を稼ぐ。その間の直線距離はわずか約500mを、スイッチバックとループで4.7kmをかけて、高度差約100mを迂回している。
 真幸駅はスイッチバックの北端にあり、逆N字型の切り返しで高度差約50mを下降している。
大畑駅のウィキペディア                          真幸駅のウィキペディア