まな兵衛落書帳トップ表紙(メニュー)に戻ります

SWISS Mountain railways
from CIBA calender, 1990
左右のサムネイルをクリックすると、中央に拡大して表示されます。更に中央のイメージをクリックするとオリジ
ナルの大きなイメージが新しいウインドウで表示されます。オリジナルのイメージはスキャナーで取込みました
 
スイスの登山鉄道 − チバ・ガイギー社のカレンダーに想う

 スイスの国土はほぼ半分が山に覆われている。そこに住む人々は豊かな自然に恵ま
れ、山野を歩くことで健康を享受している。しかし、険しい自然は生活の不便さを生んで
いる。目もくらむ山の高さ、深く切り込んだ谷、入り組んだ川の流れ、岩や雪・氷は人が
山に入ることを拒み、山を征服するするのは強固な開拓者魂と、そして、最先端技術の
みが可能にしている。

 スイス・アルプスを目指す登山者たちは、頑固なまでの意志と闘争心で山に挑んでき
た。しかし、彼らとても山へのアプローチに交通手段の支援がなければ、その挑戦は困
難を極めたであろう。スイスの人々は生活をより豊かにするため、峻険な地形に道路を
築き鉄道を敷いてきた。特に鉄道の建設は困難を極め、雪崩や落石、洪水などの自然
の驚異に頑固さと先端技術で戦い、防御設備や避難所を持つ無数の橋やトンネルを築
き、アルプス特有の特徴ある鉄道網を拡張してきた。

 現在のスイス鉄道網は人々の輸送手段の中軸となり、生活の基盤となっている。特
に山岳地帯の登山鉄道は町から遠く離れた村々をつなぎ、徒歩や家畜による輸送手
段の辛苦から人々を解放した。登山鉄道は山々を越え、山を突っ切り、永久凍結した
雪や氷の地方まで延びている。これらの山岳鉄道は人々の生活に加え、多くの保養
地を結ぶことでアルプスの旅行者に寄与している。

 アルプスの鉄道は19世紀後半に主として民間事業として発展してきた。
多くの主要幹線は英国人技師により導入された、1435cmの標準軌間で建設されて
いる。山岳地帯の登山鉄道は、建設を容易にするためと輸送量のため、80〜100cm
の狭い軌間が用いられている。もっとも狭い軌間はバーゼルに近いヴァンデンブルグ鉄
道の75cmである。当初用いられた蒸気機関は現在ではほとんど電気機関に置き換わ
っているが、観光目的のため蒸気機関車が活躍している鉄道もある。

 平坦でなだらかな丘陵地では、駆動車輪とレールの摩擦力により車両を動かすが、
傾斜のきつい山岳地帯では摩擦力での駆動が困難になる。傾斜度13分の1以上にな
るともはや摩擦力では車輪が空転をはじめる。摩擦力でのもっとも急勾配はベルン・オ
ーベルランド鉄道のモントロー付近で、13.8分の1である。そこでスイス・アルプス登
山鉄道を特徴づけている、アプト式で知られるラック方式の駆動が導入された。

 ラック方式は機関車(や客車にも)の車輪の間に取り付けられた歯車を、レールの間
に設置されている櫛状のラックとかみ合わせることで駆動し、車輪とレールとの摩擦力
によるスリップを防止する。ラック方式は1971に導入され、その後アプト方式などに改
良が加えられてきた。アプト方式はラックを多重化しより強力でスムーズな駆動を実現し
ている。

 さらに険しい傾斜度のピラタスのルート(2.1分の1)では左右一対の駆動歯車が、レ
ールの内側に刻まれたラックと水平にかみ合うロッハー方式を採用している。傾斜の緩
やかな区間は車輪とレールの摩擦で駆動し、傾斜のきつい区間にラック式のレールを
施設している。ラックレールに電車の駆動歯車がかみ合う特徴ある音は車中にも聞こえ、
マニアには応えられない感動を与えている。

まな兵衛落書帳トップ表紙(メニュー)に戻ります