演奏スタイルからジャズの流れを追う
		ジャズは大きく分けてディキシーランド、スィング、そして、モダーン・ジャズに分けられる。そしてそれぞれ、次の呼び名のスタイルに進化したとされる。 　ディキシーランド・ジャズは白人側からの総称であり、ニューオリンズ、あるいはトラディショナルという方が今日定着している。 　先にディキシ−からスィング、モダンと進化したと書いたが、大きな流れとしては古い演奏スタイルが衰退し、次の新しいスタイルに取って代わられたともいえる。 　スタイルの変遷は、北米大陸を北上する形で進化している。すなわち、南部のニューオリンズに誕生したジャズは、やがてミシシッピー川を北上し、 カンサスシティを中心とする中部でスィングに進化した。そして、さらに北上しシカゴからニューヨークにいたり、モダーンへと変化した。 　しかし、衰退したスタイルのリバイバルや、行きすぎた進化からの反動もあり、今日においてもニューオリンズとスィングもフアンは多く盛んに演奏されている。 　左は有名なデザイナー和田誠さんのグラフィック作品で、ジャズの歴史をパターンで表現したもの。なお、大きさの関係から見やすくするため、小さい文字を消し色を変えた。 　左上に貼り込んである地図はアメリカの地図を縦横をも反転し、ジャズの歴史の流れをパターンに対比させた。これはエド・マクベインの87分署シリーズに登場するアイソラ市が、マンハッタンを反転させた説にヒントを得た。
"New Orleans Jazz" 　アフリカから輸入され、奴隷として働いていた黒人たちは、つらく苦しい労働から魂を癒すためブルーズを生み出した。 　やがてブルーズは黒人教会音楽のニグロ・スピリチュアルや、白人の舞踊音楽、マーチなどのリズムと形式を取り入れたラグタイムの影響を受け、ニューオーリンズ・スタイルと呼ばれる黒人音楽に収束、発展する。 　「ジャズ」という表現は後年シカゴあたりから定着しだしたもので、デキ シーランド・ジャズという分類は、白人が南部(デキシー)のジャズと総称したもの。スタイルはマーチの２拍子を基本に、クォドリズの跳ねるようなリズム、ラグタイムのシンコペーションなどを取り入れた、 　アフタービートに乗せて、黒人特有の憂いがこもったブルーズのメロディが奏でられる。主題のメロディの後、単純なコード進行にあわせ、自由闊達なアドリブが演奏される。アドリブのバックでは他の楽器が、自由にオブリガードを奏で、独特のアンサンブルを醸し出す。楽しくて、そして哀しい音楽がニューオーリンズ･ジャズだ。	"Swing Jazz" 　ニューオーリンズの紅灯街で演奏していたプレーヤー達は、第1次世界大戦の開戦により、売春街の閉鎖にともなって職を求め、中部から北部へとミシシッピー河を北上した。流域の諸都市カンサスシティ、シカゴ、そして、ニューヨークへと。 　それぞれの街に定着、あるいは、滞在し大都会の息吹と白人達の新しい音楽を学んだニューオーリンズ・スタイルのジャズはしだいに洗練され、都会風に発展していった。 　一方、ニューオーリンズのジャズに触れた白人達も、自らジャズを学び取り入れ、自分たちのスタイルを生み出していった。そして、より洗練された４ビートのジャズ、スイング・ジャズとして大発展した。 　カンサスシティからカウントベーシーが、シカゴでは今世紀最大のジャズメン、ルイ・アームストロングが大活躍を開始。ＮＹハーレムではデューク・エリントン、ベニー・グッドマンなどの大流行にいたり、ジャズの普及と認知に貢献した。	"Modern Jazz" 　大流行したスイング・ジャズは、徐々にコマーシャル化が進み、大衆には受け入れたが、音楽としての進化が停滞し、マンネリに陥ってしまった。意欲的なジャズメン達がＮＹハーレムのミントンハウスでセッッションを重ね ニュージャズを模索しだした。チャー リー・クリスチャン、セロニアス・モンク、ディズィー・ガレスピー、そして、チャーリー・パーカーなどなど。 　ついに１９４１年、クリスチャンの歴史的名演奏「ハーレム・ジャズ・ナイト」がなされ、ここに ”Ｂｅ Ｂｏ ｐ”モダーン・ジャズが誕生する。 　「ビー・バップ」はそれまでのジャズの 音楽概念を覆してしまったのである。それは今までジャズが忘れていた人間性と、激しい生命力にあふれ、全く新しいスタイルのジャズだった。 　モダーン・ジャズは、さらに音楽的内容を 様々なスタイルに進化させ、今日にいたっている。 激しさの反動であるクール、土くさくファンキーなイーストコースト、高度で精緻なウエストコースト、モダーンなアンンブルを追求したビッグバンド、そして、衝撃的なアバンギャルドのオーネット・コールマン…へと
lust updated : May.6,2008